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新潟家庭裁判所長岡支部 昭和53年(少)373号 決定 1978年7月12日

少年 Y・T(昭三四・四・二八生)

主文

少年を中等少年院に送致する。

理由

(非行事実)

少年は、

第一  一 公安委員会の運転免許を受けないで、昭和五三年四月八日午後一時四七分ころ、小千谷市○○○○○××××番地付近道路において、普通乗用自動車(○○××○×××号)を運転し

二 法定の除外事由がないのに、前同日同所において、前記普通乗用自動車を運転して道路の右側部分を通行し

第二  公安委員会の運転免許を受けないで、同年五月二三日午前一時三〇分ころ、十日町市○×××番地付近道路において、普通乗用自動車(○××○××××号)を運転し

第三  同年三月一日当庁において、窃盗、道路交通法違反により保護観察に付されたものであるが、同年四月上旬ころ、保護者に無断で家出し、十日町市内の友人方に止宿し、定職に就かないまま夜遊び、盛り場徘徊などをして無為徒食の生活を続け、同年五月上旬クラブのボーイとして勤めるも勤務成績不良のため同年六月中旬解雇され、以後再び徒遊の状況にあるものであり、この間父親が少年の居所を突きとめて家に帰るよう説得するもこれに従わず、かつ、担当保護司方にも出頭しないなど、正当な理由がなく家庭に寄り付かず、保護者の正当な監督に服しない性癖を有するものであり、このまま放置するとその生活状況、性格、環境等に照らして、将来罪を犯すおそれがある

ものである。

(法令の適用)

第一の一および第二の事実につき いずれも道路交通法六四条、一一八条一項一号

第一の二の事実につき 同法一七条三項、一一九条一項二号の2

第三の事実につき 少年法三条一項三号イ、ロ

(処遇の理由)

少年は、前記のとおり、昭和五三年三月一日当庁において保護観察に付されたばかりのものであり、前件時において、既にその非行態様(自動車盗、無免許・酒酔い運転、無免許・酒気帯び運転)、非行歴(前件以前に窃盗二件、道路交通法違反二件)、日常の生活態度、性格、環境等に照らして収容教育が必要な段階にあるとも考えられたのであるが、前件で観護措置をとられ、初めて身柄拘束を受けたこともあつてか、審判において深い反省と強い更生への意欲を示したため、自主的な立直りに期待して保護観察に付したものであつた。しかしながら、少年の更生への決意は一か月と持続せず、保護司の世話により就職した「○○鉄筋」を、無断欠勤を繰返した末同年三月末にやめ、間もなく前記のように家出をし、友人方に止宿して無為徒食の生活を続け、その間無免許運転を反復し、夜遊びに興じるなど、生活態度が大きく乱れ、一旦クラブのボーイとして勤めるも遅刻が多かつたことから解雇されたことにみられるように、積極的な勤労意欲に極めて乏しいものである。

このような行状ならびに保護観察に殆んどなじまなかつたこと、家庭での監護が期待できないこと、更に鑑別結果、少年調査記録等に顕れている少年の性格、交友関係、環境等に鑑みると、もはや少年の在宅での保護は限界に来ているものといわざるをえず、このうえはしかるべき矯正施設において、強制的枠組内で、少年に欠けている遵法精神を涵養し、勤労意欲を高め、生活態度の改善を図ることが、今後の少年の健全な育成に必要であると思料される。

なお、本件は、前記道路交通法違反保護事件二件が当庁に係属後、新潟保護観察所長から新潟家庭裁判所に対し、保護観察に付された以後の少年の行状について、犯罪者予防更生法四二条一項による虞犯通告がなされ、それが当庁に回付になつたものであり、通告理由の一部に前記の既に当庁に係属していた二件の道路交通法違反事実が少年法三条一項三号ニに該当するとして含まれていたものであるところ、このような場合、少年の虞犯性が犯罪事実である前記道路交通法違反に現実化したものとして、犯罪事実についてだけ認定し、虞犯事実を要保護性の面で考慮すれば足りると考える余地もあるが、本件各記録によれば、少年の虞犯性は、その生活態度、行動傾向、性格、環境等から、犯罪事実として現実化している道路交通法違反の点にとどまらず、窃盗等の他の犯罪についても認められるものであるから、虞犯事件が右道路交通法違反事件に全部吸収されると考えるのは妥当でなく、これを別個に審判の対象として、全事件を併合して審理し、上記のとおり認定をしたうえ、その処遇を決定したものである。

よつて、少年を中等少年院に送致することとし、少年法二四条一項三号、少年審判規則三七条一項、少年院法二条三項により、主文のとおり決定する。

(裁判官 山崎恒)

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